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夜の繁華街の喧騒は、昼間とは違った雰囲気だ。行きかう人々の男女比も違うようだし、人々の服装もまた、昼間のような明るさはない。
ビルとビルの合間にぽつんとある、小さなコインパーキングに電灯はなかったけど、周りから照らされる光のせいで、ちっとも暗いとは感じなかった。
夜だから見上げる空は真っ黒だけど、それが逆に不思議。
ここは、男同士での一晩の相手を探す場所だ。バーとかサウナとか、もっとヤバイとこだと公園の男子トイレとか、色々含めた、いわゆるハッテン場の1つ。
けど、やっぱりいざとなると勇気が出なくて。何人かのオジサマ達に声をかけては貰ったものの、うなずくことができなかった。
一晩きりの相手なんか、誰だっていい筈だ。
だから、こんなとこに来てみたんだ。
なのにどうしても1歩が踏み出せない。あっさり捨てられて、もう未練だって残しようもない筈なのに、まだ前の恋を引きずってるみたいで情けない。
先週まで付き合ってた人は、通ってた予備校の人気講師だった。いや、付き合ってると思ってたのはオレだけで、その人にとってはたくさんいる遊び相手の1人だったに違いない。
その人、夏木先生は、女子にも男子にも人気があった。色白で小柄な子が好きなんだって噂だったし、最初はオレも言われた。
『春臣君は可愛いね』
って。
でも高3で遅い成長期を迎えたオレは、1年で10cmも背が伸びて、先生と同じくらいになってしまった。そのせいもあるんだろうか。
『大人なんだから、もう卒業しないとね』
大学合格を知らせに行ったその時に、関係の終了を言い渡された。
ケータイは通じなくなり、SNSはブロックされた。予備校の生徒じゃなくなったオレはもう部外者で、講師に近付くこともできない。
もう諦めるしかない。諦めたい。何もかも忘れてしまいたい。誰か、忘れさせて欲しい。
そう思ってハッテン場まで来たのに、オジサマたちの誘いを受けることもできそうにない。
オレ、どうすればいいんだろう?
途方にくれて真っ黒な空を見上げた時――。
「迷子か?」
背の高い青年に声をかけられて、目が合った瞬間ビックリした。
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